月刊 原田教正 11月
「My origin photographs #10」
Monthly Kazumasa
November
/ My origin photographs #10
11月、ベルリンは−5℃。冷蔵庫の冷えがいまいちだからと野菜や飲み物はバルコニーに出していたら、いつのまにか凍っていた。繊維がダメになった野菜たちを朝からスープに仕込みながら、ここ最近の日々を思い返す。アーティストビザの手続きなど、なかなか物事がスムーズに進まない。そうして時間ばかり過ぎる宙ぶらりんな日常を、台所に立ってじっと煮込んでいるような、そんな心持ちだ。
毎日、不慣れなドイツ語の書類と格闘しつつ、返信のない移民局に三度メールを送る。それでも、長期滞在用フラットの契約と住民登録は完了できそうだ。少しは進んでいる。そう思って窓を開けて、刺すように冷たい風を大きく吸い込む。ベルリンの冬は、暗く静かでとてもいい。早く落ち着いて制作がしたいが、今は辛抱。
ー 原田教正
Edition 1/3
Lambda Print
92mm x 61mm
H395mm x W365mm x D35mm
2024
原田教正 | Kazumasa Harada
1992年東京生まれ。2016年に武蔵野美術大学映像学科卒業後はコマーシャルフォトグラファーとして活動する傍ら、積極的に展覧会や写真集の制作を続けてきた。2020年には初の写真集『Water Memory』を刊行し、その後『An Anticipation』『Obscure Fruits』などを刊行。2023年にはベルリンでの滞在制作を経て『時間の園丁』(南青山information)での展示や写真集『My origin photographs』を新たに刊行。2025年9月から本格的に制作拠点をベルリンに移す。
https://www.kazumasaharada.com/