月刊 原田教正 10月
「My origin photographs #05」
Monthly Kazumasa
October
/ My origin photographs #05
10月、ベルリンは晩夏から冬へと転がるように季節を進めていった。15°以上あった最低気温は2週間で5°近くまで冷え込むようになり、続いていた晴天は冷たく重たい曇り空へと変わった。たった数日だけ味わった微かな夏の残り香も印象的だったけれど、やっぱり冬のベルリンの静けさと殺伐とした空気が私は好きだ。光景は荒涼として、時間はゆっくりと過ぎていく。写真を撮るにはこれ以上ない季節が、日本よりずっと早くやってくるのだ。
9ヶ月ぶりのベルリンでの日々は、まだまだ何も定まってはいない。英語が上手く話せないこと、まだビザがどうなるか不透明なこと、仮住まいなこと。生活を含め長期的には金銭的な不安も拭えない。それでも淡々と、目の前に置かれた現実と向き合っていく。やるべきことは、いつだってある意味で明快だ。写真がそうであるように、悩むためになにかを複雑に考えてもそこに真実は存在しないのだから。とにかく歩くしかない。
10月中旬のVieena Art Book Fairでは、この2年間ほどベルリンと東京で制作していた作品をまとめた冊子を販売した。多くの人が頁を捲って、様々な感想を私に投げかけ購入していった。「美しい」という言葉で片付けない彼らの写真に対しる姿勢と読解力に、大いに励まされた。完売し、日本から本を運んでくれた飛嶋さんの荷物は随分と軽くなったはずだが、彼は大量の写真集を購入していた。目撃したそれらは、どれも写真への愛だったに違いない。
ー 原田教正
Edition 2/3
Lambda Print
92mm x 61mm
H395mm x W365mm x D35mm
2024
原田教正 | Kazumasa Harada
1992年東京生まれ。2016年に武蔵野美術大学映像学科卒業後はコマーシャルフォトグラファーとして活動する傍ら、積極的に展覧会や写真集の制作を続けてきた。2020年には初の写真集『Water Memory』を刊行し、その後『An Anticipation』『Obscure Fruits』などを刊行。2023年にはベルリンでの滞在制作を経て『時間の園丁』(南青山information)での展示や写真集『My origin photographs』を新たに刊行。2025年9月から本格的に制作拠点をベルリンに移す。
https://www.kazumasaharada.com/