月刊 原田教正
9月
「My origin photographs #14」
Monthly Kazumasa
September
/ My origin photographs #14
2019年2月、生まれて初めてベルリンを訪れたのは28歳のことだった。パリ、アムステルダムと経て渡った真冬のベルリンは鉛のような暗く分厚い雲に覆われ、凍てつく寒さのなか殺伐とした景色が広がっていた。その静けさとドイツ特有の写真カルチャーに触れて、すぐに日本を離れこの場所で暮らそうと考えたが世界的パンデミックによりその願いは一度潰えた。
それから3年後の2023年9月末、そして2024年10月末とベルリンを訪れ、ビザが許す90日間をほぼ目一杯使いながら滞在制作に没頭した。コマーシャルの領域からでは向き合いきれない、写真が写真である所以を確かめるような日々と、レンズを介して繰り返さる自己や現象との対話。そうして積み重ねた親密な写真との時間。それは、これまでのどんな時間とも代え難いものだった。そしてまた、ベルリンに戻ってきた。今度はもう少し長くここで生活するために。
写真は、いつも過去に照らされている。あらゆる光景は、出来事は、偶然ではなくどこからかやってきた過去という時間の延長にある。そして物事を照らし出す光は、何億光年もの過去から現在に降り注いでいる。写真は確かに現在を写すことしか叶わないが、そこにどのようにして、過去から続く時間を見出すことができるのか。私は、ずっとそのことに今も目を向け続けている。
ー 原田教正
Edition 3/3
Lambda Print
92mm x 61mm
H395mm x W365mm x D35mm
2024
原田教正 | Kazumasa Harada
1992年東京生まれ。2016年に武蔵野美術大学映像学科卒業後はコマーシャルフォトグラファーとして活動する傍ら、積極的に展覧会や写真集の制作を続けてきた。2020年には初の写真集『Water Memory』を刊行し、その後『An Anticipation』『Obscure Fruits』などを刊行。2023年にはベルリンでの滞在制作を経て『時間の園丁』(南青山information)での展示や写真集『My origin photographs』を新たに刊行。2025年9月から本格的に制作拠点をベルリンに移す。
https://www.kazumasaharada.com/