月刊 原田教正
5月
「物体と肖像」
Monthly Kazumasa
MARCH
/ 物体と肖像
5月、母校での特別授業や生活環境の変化などもひと段落し、徐々に落ち着きを取り戻す。30歳を過ぎてドイツでのショートステイを2回、転々とした生活や激しい環境変化にも、以前より少し寛容になったのかもしれない。その時いる場所で、淡々とすべきことをする。一喜一憂より、粛々と。そんな日々が続く。そろそろベルリンに渡る準備も始めなければ。
ベルリンのアパートで過ごしていたとき、モデュラーで背景紙を買って窓際の壁に貼り、そこで毎日のように静物を撮影していた。大判カメラの大きなレンズを覗くと、冬の鈍い光が物体の背後まで照らし、輪郭や質量が明かされる。物体の正体を把握する最も重要な手掛かりは、その質量ではないか。形や手触りは、あくまで表面上のデザイン的な情報だ。
写真は、計りのように物理的な重さを計測することはできないが、写真的質量を持ち合わせていることは、とても重要だ。なぜなら、イメージにおいても質量は重力に比例するのだから。
ー 原田教正
H450mm x W350mm x D40mm
Lambda Print
Semi-glossy paper inkjet
原田教正 | Kazumasa Harada
1992年東京生まれ。2016年に武蔵野美術大学映像学科卒業後はコマーシャルフォトグラファーとして活動する傍ら、積極的に展覧会や写真集の制作を続けてきた。2020年には初の写真集『Water Memory』を刊行し、その後『An Anticipation』『Obscure Fruits』などを刊行。2023年にはベルリンでの滞在制作を経て『時間の園丁』(南青山information)での展示や写真集『My origin photographs』を新たに刊行。2025年9月から本格的に制作拠点をベルリンに移す。
https://www.kazumasaharada.com/